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【連載コラム第5回】武将が害虫に!?お祭りの意味がよ〜くわかるお話。

日本の祭りをお伝えするコラムも5回目です。今回は「5」にかけて、日本ならではの信仰、「祟り」に関係する「御霊(ゴリョウ)」を意識した芸能についてお話します。

平安時代、疫病や災害は御霊(ごりょう)・疫神(この世に恨みを残して亡くなった怨霊)の仕業と信じられ、彼らを鎮めるための行事、「御霊会(ゴリョウエ)」が盛んに行われました。例えば貞観5年(863年)、京都の神泉苑で行われた御霊会では早良親王などの御霊が祀られています。

御霊への芸能は時に「風流(ふりゅう)」の芸能とも呼ばれます。「フウリュウ」ではなく「フリュウ」です。

「風流」は万葉集では「ミヤビ」と読まれていますが、平安の頃からは、祭礼で用いられる山車や装束などに施された華美な趣向を指して「フリュウ」と表現していたようです。

『梁塵秘抄口伝集』巻14には、久寿元年(1154年)京都の今宮神社で行われた今宮社御霊会において、傘の上に風流な飾りの花を掲げて唄い囃した「風流のあそび」をした、とあります。これは、現在4月に行われている今宮神社の春の大祭「やすらい祭」のことです。

「やすらい祭」では、花を飾った長柄の風流傘を先頭に行列が進みます。

そして笛と歌に囃されながら、赤(しゃ)熊(ぐま)(赤いカツラ)や黒熊(こぐま)(黒いカツラ)を被った異形の者が、鉦や太鼓を打ちつつ地域の辻々で「やすらい花」の掛け声と共に踊り、練り歩くのです。

やすらい祭
今宮神社は元々疫神と関わりがある土地にあり、正暦5年(994年)に開かれた紫野御霊会は、現在5月に行われている「今宮祭」の起源とも言われます。

この時は京都中の老若男女が綾傘に風流(つまりはオシャレ)を施して囃子に合わせて歌い踊り、病神らを移した人形を難波江に流したと伝わっており、これが「やすらい祭」の行列のルーツと言われています。

花が咲き始めて暖かくなる時期に行うことで、花と一緒に疫病や災害も飛散すると思ったのでしょう。

ちなみに御霊会は、後に各地の寺社でも同様の行事が行われ、更に神輿渡御などの行列や風流・田楽と呼ばれる踊りも加わり、時期も疫病が多発する旧暦の5月~8月に集中するようになりました。

こうした鎮送の際の芸能は華やかな場合が多く、結果としてお盆といった夏の民俗芸能も「風流(フリュウ)」の芸と言われる訳です。

さて、そんな風流ですが、風流芸の研究を確立した本田安次先生によると
①疫病祭りに発したもの
②田楽に発したもの
③念仏踊りに筋をひくもの…つまりは「盆踊り」!

と分類されます。

①の例では、「フリュウ」という音を大事にしている祭が佐賀県にあります。

県指定重要無形文化財「面浮立(めんふりゅう)」です。この祭では五穀豊穣に感謝し、雨乞祈願や怨霊鎮魂を目指し、鬼の面をつけて踊ります。この鬼面こそが「浮立面」と呼ばれているのです。

②の先に③の例を。お盆の時期に岩手県などで行われる「けんばい」と呼ばれる芸能があります。

鬼面を使うことから「鬼剣舞」とも言います。「けんばい」は東北に分布しており、いずれも男性が激しく足を踏み鳴らし、地面を跳ね上げて踊ります。

剣を持って踊る「剣舞」からというより、大地を踏み鳴らす所作が修験道の呪法「反閇ヘンバイ」に由来するからでは?と言われています。

さて、②。今回は「虫送り」をご紹介します。

福島県の「白河天道念仏」や静岡県の「遠州大念仏」などです。「念仏」が目立ちますが、実際は稲の害虫を鎮送する祭です。

この害虫、何とモデルがいます。

虫送りの人形

虫送りの人形


出典:wikipedia


斉藤別当実盛(さいとうべっとうさねもり)(1111~1183年)という、源平合戦期に実在した平氏側の武将です。

上司の平維盛(たいらのこれもり)が木曽義仲を討った時、彼は義仲の武将・手塚光盛に討たれるのですが、その死に様は、『平家物語』巻第7に「実盛最期」として一章設けられています。

そんな武将がなぜ害虫に!?

実は彼、この戦を最後の戦と定め、「最後こそは若若しく戦いたい!」と白髪を黒く染めてまで戦いに挑むも、あえなく討死してしまいました。その悔しさで怨霊化したと信じられ、実盛のタタリが発生!

これが害虫と合体したのです。

なんで虫か、というと・・・田楽の回で敢えてキチンと述べなかったのですが、古来、日本では田の神を「サ」と発音しました。

田の神が座す樹木は「サクラ(サの座)」。

田植えの時、田の神のために苗を植える乙女は「サオトメ(サの乙女)」。

田んぼの虫は「サノムシ」。

その「サ」と、斉藤別当実盛(サネモリ)の「サ」が繋がってしまった訳ですね。

島根県に伝わる虫送りには等身大の藁製実盛人形が登場します。
こうして、『平家物語』の武将は稲の害虫になったのです…気の毒に。

そんな実盛さんで話を閉めて、次回は「獅子舞」についてお話させていただきますね♪




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ライタープロフィール

山崎 敬子

玉川大学芸術学部で民俗芸能の講師

民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。

元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。


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